職場の上司や先輩が直接指導にあたる「OJT研修」。新人を早い段階で戦力にできる、育成にかかる経済的コストを削減できるなどたくさんのメリットがありますが、やり方が間違っていては目標とする人材は育ちません。
そこで今回は、OJT研修の概要から正しいやり方までわかりやすく解説します。育成を成功させるために大切な3つのポイントも紹介するので、新人教育に悩んでいる方は参考にしてみてください。
【 目 次 】
OJT研修とは?
OJT研修は社員教育の方法のひとつで、経験豊富な上司が実際に業務をしながら知識や技術を教えます。原則、新人1人に担当者が1人つきます。日常の業務に役立つ情報をすぐ伝えられるため、多くの企業で導入が進んでいる方法です。
新人にとっては業務に早い段階で携われるだけでなく、上司とコミュニケーションを取る機会が増えるため人間関係を構築しやすいなど多くの利点があります。教育担当者にとっても、日頃取り組んでいる業務の目的ややり方の意味を改めて見直せるよい機会になります。
OFFJT研修との違い
OFFJT研修は職場外で行われる研修です。新人職員を集めて外部の研修プログラムや人事が作成したカリキュラムを受講させ必要なノウハウの習得を目指します。
あらかじめ内容がきっちり決められているため、担当者で指導に大きく差が生じることはありません。OJTとは違い講師は職場外の人物であることが多く、指導内容も実践を必要としないものであるのが一般的です。
【OJT研修】実施により得られるメリット・デメリット
OJT研修で得られるメリット・デメリットは以下の通りです。
メリット | デメリット |
社内コミュニケーションの活性化 育成にかかる経済的コストを削減できる 新人を早い段階で戦力にできる | 体系的な理解は深まりにくい 担当者により習得スキルや知識に差が出る |
上記に挙げた項目について、順に詳しく説明します。
メリット
まずは、OJT研修で得られるメリットを見ていきましょう。
1.社内コミュニケーションの活性化
OJT研修では上司が日々の業務を通じて、ノウハウや知識を直接教えます。これにより、新人・上司・先輩との間でコミュニケーションを取る機会が増加します。
教育を行うなかで困ったことやわからないことがあれば、職場内で教育に関する会議を行うケースも出てくるでしょう。そのため、社内のコミュニケーションの活性化が期待できます。新人も早い段階から上司や先輩と関わる機会が増えることで、職場内の人間関係に慣れやすいです。
2.育成にかかる経済的コストを削減できる
OJT研修は、担当者が教育内容を決めて指導にあたっていきます。OFFJT研修のように外部の人へ研修を依頼したり、研修を実施する環境を準備したりする必要はありません。
人事側が教育に関連するカリキュラムを作成する手間も省けます。そのため、OJT研修の導入は人事側の業務削減につながります。
3.新人を早い段階で戦力にできる
業務を通して指導するため、戦力化を意識した人材育成ができます。人手不足の職場には理にかなった方法です。
デメリット
続いて、OJT研修のデメリットを見ていきましょう。
1.体系的な理解は深まりにくい
OJT研修では、職場の上司や先輩が教育担当になります。教育の専門家ではないうえに日々の仕事をこなしながらの教育となるため、どうしても目の前の仕事を上手にこなすための指導に留まりがちです。
これにより、自分の取り組む仕事が企業にどのような効果をもたらしているのかなど全体の仕組みに関する理解が不足することに。その日の仕事に関係のない知識やスキルは中々教えてもらえないといった状況にも陥りやすく、体系的なノウハウは身につけにくいです。
2.担当者により習得スキルや知識に差が出る
新人が習得できるスキルや知識は、すべて担当者に依存します。深い部分まで教えてくれる人であれば目的や意味を理解したうえで仕事にあたれますが、目の前の仕事を終わらせるために必要最低限のことしか教えない人が担当だった場合、仕事のやり方しかわかりません。
OJT研修の正しいやり方
OJT研修は、基本的に次の4段階のステップに基づいて行うのが大切です。
Show(やってみせる)
Tell(説明する)
Do (やらせてみる)
Check(評価・指導)
上記4つのステップについて、順に説明していきます。
Show
業務のやり方を実際に見せて、教わる側に全体像を具体的に把握してもらいます。
Tell
やって見せた業務について、口頭で説明を行います。流れをただ説明するのではなく、その手順でやっている理由や業務を行う意味・背景などまで説明するとよいです。広い視野を持って業務へ取り組むことにつながります。
Do
業務について説明したら、本人にやらせてみましょう。実際にやってもらうと理解しきれていない点が見えてきます。指導する側もなぜうまくできないのかが見えやすく、適切な指導ができるようになります。
Check
やらせた後にはフィードバックをします。上手くできていた点、できていなかった点を伝えるだけでなく、なぜ失敗してしまったのか、今後どのようにすればよいのかについても具体的に説明することが大切です。
フィードバックを終えたら、現段階での業務に対する評価を付けます。本人のレベルが目標値に達するまでは、Show~Checkまでを繰り返し行うとよいでしょう。
OJT研修を成功させるために大切な3つのポイント
OJT研修を成功させるには、意図的・計画的・継続的の3つを意識して教育にあたります。それぞれ見ていきましょう。
意図的:実行する意図や目的を把握する
教育へ移る前に、まず教育の目的や意図を考えましょう。現場としてどのような人物に育ってほしいのか、具体的な人物像を明確にします。
決まったら担当者間はもちろん、教育を受ける側に対しても目的、目標を共有しましょう。
計画的:目標レベルに到達できるよう計画的に教育を行う
目標を決めても、達成までの計画を立てなければ効果的な教育はできません。場当たり的な指導ではなく目標達成までの教育計画を具体的に立て、できる限り計画的に進められるようにします。
継続的:研修期間終了後も継続して指導する意識を持つ
OJT研修が終わっても教育は続きます。業務の多くは、経験を積まなければ上達しないからです。したがってOJT期間終了後も上司や先輩が一体となって後輩に自然と指導できるような環境整備・社内文化の形成が重要となります。
まとめ
今回はOJT研修について、概要から正しいやり方、育成成功に大切なポイントまで詳しく解説しました。OJT研修は上司が実務を通じて、必要なノウハウを教える方法です。教育にかかる経済的コスト削減や早い段階で戦力になる人材育成など、実施にはたくさんのメリットがあります。
しかし担当者により習得スキルや知識に差が出る、体系的な理解は深まりにくいといったデメリットも存在しています。今回紹介した4段階での指導方法やポイントを把握したうえで教育にあたり、目標とする人材育成を成功させましょう。